福山通運健康保険組合

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ニュース&トピックス

[2006/01/30] 
めーるぼっくす 「これからのコンビニ」

80年代初めのころ、冗談のように「コンビニエンス・ストア症候群」などという言葉が言われたことがあった。症候群といっても別に病気ではない。次第に太っていくのである。
 どういうことかというと、ひとり暮らしの学生が深夜に人恋しくなって、ついコンビニに行ってしまい、雑誌を立読みしたあげくに必要もないのに弁当やら何やら食物を買い込んでしまう。結果として、近所にコンビニができると、ひとり暮らしの人間は太ってしまう。それを「コンビニエンス・ストア症候群」と呼んだのである。
 考えてみると、1980年といえば、現在のように携帯電話やEメールですぐに友人と連絡が取れるわけではなかったし、ビデオ・デッキの普及率は、わずか1%。当然、レンタル・ビデオも一般的ではなく、深夜の無聊(ぶりょう)を慰めようにも、今とは比較にならぬほど選択肢が限られていたもので、隔世の感がある。
 コンビニも今やすっかり私たちの生活に浸透してしまって、当たり前の街角の風景になってしまった。私もよく利用するが、買うのはもっぱら煙草とビールばかり。しかし、ときにはデスクスタンドの電球が切れて、あわてて買いに走ったり、トイレットペーパーやティッシュペーパーを夜中に求めに行くこともある。時間を問わず開いているというのは、やはり便利で、しかし、入ると目的以外のものをつい買ってしまったり、あれこれと雑誌を立読みしてしまうのは昔と変わらない。
 そして、最近、コンビニで気づいたことがある。深夜になると昔と同じように、そこに見られるのは若者の姿なのだが、日中は、ずいぶんと年配の、還暦を超えた買物客の姿も珍しくなくなったということで、今ではコンビニの独身客と言えば、若者ばかりではなくなったということなのかも知れない。核家族化は当たり前のことになり、連れ合いに先立たれたら、老いてひとり暮らしということになる。現に私の両親の知人で夫に先立たれ、広すぎる家を売ってアパートでひとりで生活していたが、死んで三日たってから発見されたという人が最近あった。高齢化社会になると、そうしたことは珍しくなくなるだろうし、コンビニの景色ももっと変わっていくに違いない。

                              城戸朱理(詩人)

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