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めーるぼっくす 新しい靴とささやかな冒険
登山を趣味にしている人同士だと、どんな靴を履いて山に登ったかが話題になることが少くないようだ。季節やルートによって難易度がずいぶんと変わるだけに、登山靴の選択は大事なものらしい。
ところで最近の日本人は休日の服装がカジュアル化したため、ホテルなどでは以前のように服装でどういう客かを判断するのが難しくなってしまったという。それでホテルマンは腕時計や靴をさりげなくチェックするのだというが、靴というものは面白いもので、プロの目からだと、どのていどの品かがすぐに分かってしまうものらしい。欧米だと眠るとき以外は靴を履いたままの生活だから、靴に対する意識が高いのは当たり前だが、近年では日本でも修理をして大切に履く人が増えているらしく、それだけ靴の生活が浸透したということなのだろう。
私自身、一昨年に事故で右脚を骨折してから、靴には気を使うようになった。やはり、安定感があって足首までホールドしてくれるブーツやスニーカーの方が安心感がある。たとえ着脱は少し面倒でも歩いている時間の方が長いのを考えれば、普通の皮靴よりもブームやバスケットシューズを選ぶことの方が多くなった。この数年、若い世代にはナイキ社を始めとするスニーカーが異常なまでのブームとなって、数10万円のプレミアがつくものまであるが、そんな流行のおかげで選択の幅が広がったのはありがたいことだと思っている。
実際、最近のスニーカーというのは実に優秀で衝撃の吸収が考えられているため本当に歩きやすい。散歩に出かけても、つい、今まで通ったことのない道に紛れ込んでみたりして、今まで気づかなかった藤棚を見つけたり、見事な大樹と出会ったりとささやかだけれども思いがけない楽しさがあって、日常の小さな冒険を満喫している。
新しい靴を履いた日は、ちょっと気恥ずかしいが、いい気分のものである。そして、その靴が頑丈でしっかりした作りのものなら、どこまででも歩いていけそうな気持ちになったりする。
城戸朱理(詩人)
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