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やすみじかん 男の子/女の子
女友達の息子(5歳)は私をガールフレンドだと思っている。外でその女友達と会ったとき、「うちの子が、ズルイよボクもはるみちゃんに会いに行くって言って泣いてたよ」と伝えられれば妙に心が弾み、電話で彼女と話しているとき、ボクに換わってと騒ぐ声が後ろで聞こえればそれがまた嬉しい。大人の男だと好かれるのが鬱陶しいってこともたまにあるのに、相手がちいさな男の子の場合はもれなく気持ちいいのだから不思議だ。
彼は、特撮ヒーローものに登場する怪獣のおもちゃのコレクション(これがまたものすごくたくさんある)をよく見せてくれる。もちろん私はその分野はくわしくないので興味津々、へえーそうなんだ、スゴーイ、よく知ってるねぇ、じゃあこいつとさっきのヤツが戦ったらどっちが強いの? とか同い年のちいさい女の子になった気分で聞いちゃうのだが、するとそれはもう生き生きと瞳を輝かせながら教えてくれるのが何ともかわいい。
それにしても、なぜ男の子たちはあんなふうに怪獣や電車や動物に夢中になって、あきれるほどくわしくなるのだろう。私の女友達は、男の子だからといって青い服を着せるような育て方はしていない。教えられなくても、彼らはいつのまにか電車や怪獣に関心を持ち、それら(のおもちゃや知識そのもの)を収集し、分類し、披露するのが好きになるようなのだ。それに対して女の子たちは、いくらリカちゃん人形が好きでも際限なく収集したがるのはごく少数派だし、おそらく分類して系統だてたりもしていない。心を許した相手には、その証として自慢のコレクションを披露するかわりにナイショ話をうちあける。私はジェンダーフリーを支持しているけれど、性差というのも確かにあるなあと思う。
大人になっても、男は何ごとかを収集し、分類し、披露したがるタイプが多い。だから男と仲良くなろうと思ったら、相手が5歳でも50歳でも基本は同じなのだ。へえーそうなんですか、スゴイですね、くわしいんですねぇと、興味を持ち率直にほめること。
この前家に遊びに行ったら、私の5歳のボーイフレンドは折り紙に目覚めたらしく、舟や亀や飛行機などの作品を披露してくれた。そして帰り際、玄関先まで追いかけてきたかと思ったら「これあげる」と言って一番きれいな紙で折った蝶々を渡し、走って戻って行った。ああ……。幾つになっても女心はこういうのにわしづかみにされてしまうのだ。
川口晴美(詩人)
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