福山通運健康保険組合

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ニュース&トピックス

[2006/06/12] 
やすみじかん ハニーって呼んでみて

 配偶者を他人に向かってどう呼び表わすか、というのはどうでもいいようなことなのだけれど、なかなか悩ましい問題だ。
 以前、幼なじみの女友達が二十代半ばを過ぎて結婚した頃、会ってお茶を飲みながらいつものように他愛ない話をしていて「主人が…」と言い出したときにはビックリした。フェミニズムの立場から男尊女卑的な言い方に異議を申し立てるみたいな大げさなことでは決してなく、おいおいそんなキャラだったっけ!?という感じ。世間に流通している正しい夫婦というか家族像の枠組みの中に身を置いて、公式発言しているような、さっきまで本音でしゃべっていたのにそこからはいきなり建て前になっちゃうような、見えない壁を感じた瞬間だった。
 逆に、知り合ったばかりの年上の女性が、名字を呼び捨てにするかたちで配偶者の話を始めたとき(つまり彼女が橋本さんだった場合「橋本が…」と言うことになる)は、きりっとしていてカッコイイなぁと聞きほれてしまった。そういうふうに話し始めれば、「彼は」と自然に三人称で続けられる。でも、人によっては冷たい印象を持つのだろうか。私自身は「夫」と呼ぶのがニュートラルでいいと思っているのだけど、冷たい感じがすると言われたことがある。かといって「うちのダンナ」とか言うと、軽いのに妙にベタッとした感触で、壁がないのはいいけれど、内輪話感が強すぎて嫌なときもあるし。「亭主」も同じ。しかも、ジャージでごろ寝してそうなイメージ(が浮かぶのは私だけ?)。
 一方、男性側はどうかというと、コロンボ刑事の影響か「カミサン」を使う人がけっこう多い。「うちの奥さん」より照れが少ないのかもしれない。「ヨメさん」とか「ヨメ」と呼ぶ人もいて、私は何となく抵抗があるんだけど、どうなんだろう。どちらにしろ、パートナーの女性と対になった自分が他人にどう見られるかについて、どこか居心地悪そうに身構えている気配がする。だから、ふつうに「妻が」と話す人にたまに出くわすと、清々しいなと思う。
 最近、年下の女友達がおちゃめに「ダーリンが…」と話すのを聞いて、何だか新鮮で感動した。考えてみたら夫婦なのだもの、仲良しな気配が表われる方が自然なのだ。

                               川口晴美(詩人)


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