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ニュース&トピックス

[2006/09/22] 
めーるぼっくす  秋だから映画館へ

 ふと気づくと、もう長いこと映画館へ足を運んでいない。ビデオが普及したためなのだろうが、街の名画座も次第に閉館し、映画館じたいの数も減ってきている。
 現在、世界的な市場を持っているのは、アメリカのハリウッド映画だけで、とくに鳴り物入りといった感じの超大作ではない映画の平均的な製作費でも二十億を越えるらしいから、ほかの国では、とても立ち打ちできない。
 日本映画も話題に欠くが、日本での映画産業のピークは、1960年前後で、年間に六百本以上の新作が公開されていたという。むろん、小津安二郎、溝口健二、黒澤明といった世界的な監督が活躍し、戦前から仕事を続けていた衣笠貞之助監督の「地獄門」が日本に初のカンヌ映画祭のグランプリをもたらした時期でもあるから、映画は「娯楽の王者」であるとともに映画史を彩る名作が次々と生まれていった時代でもあった。
 けれども、昔はよかったなどというつもりはない。
 とにかく刺激的で巨費を投じ、SFXを駆使したハリウッド映画ばかりが映画の魅力ではないと思う。映画ファンに高く評価されているリトアニア生まれのジョナス・メカス、あるいはロシアのアレクサンドル・ソクーロフといった監督は低予算で八ミリを使い素晴らしいフィルムを作りつづけているし、ハリウッドでもクリント・イーストウッドのようにジョン・フォードの末裔とも言うべき映画作家がいることを忘れてはならない。
 そんなことを考えていたら、日本映画も少しずつ変わってきたらしい。岩井俊二の才能は以前から注目されていたし、北野武はヴェネツィア映画祭でグランプリを受賞。青山真治のような眼が離せないシネアストも登場した。原田眞人の「バウンスKOGALS」といった女子高生と援助交際を描く、いかにも話題作といった映画も、東京という街が久しぶりに美しく見えたほど丁寧に作られたものでとても感心した。
 映画は、やはり、自宅のビデオで観るのと映画館の暗闇でひとり、スクリーンと向かいあって観るのでは感銘が違うように思う。季節は秋。映画館に足を運んでみるというのはどうだろうか。

                                                          城戸朱理(詩人)

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