福山通運健康保険組合

福山通運健康保険組合

文字サイズ
  • 小
  • 中
  • 大

ニュース&トピックス

[2006/12/15] 
やすみじかん 恋人の趣味

   恋人と趣味があうのは大事なことだけれど、残念ながら何からなにまでぴったりというわけにはいかない。とはいえ、ここだけはゆずれないなと私が思うポイントは、二つくらいのものだ。
 まず、食べ物の好みなんてかなり違っていても(外食するときのお店選びは苦労するかもしれないが)何とかなる。起きぬけに肉を焼き始める恋人に「よく朝からそんなもの食べる気になれるねえ」と憎まれ口をたたきながら、胃腸が元気なのはいいことだとこっそり感心して自分は梅干で番茶をすするというのもオツなもの。卯の花と煎り豆腐を健康的に食べていて「鳥のエサみたいだ」と笑われても、へへんこの美味しさがわからないなんてまだまだ未熟だねとすましていればいい。ファッションも、たとえばほとんどペアルックのカップルより、ゆるゆるにカジュアルな男の子とキャリア系スーツの女の子が手をつないで歩いていたりする方がかえって仲の良さを感じるし、好みのテイストは違っている方が刺激もあって楽しいのではないだろうか。
 そういうことではなく、ぜひとも一致してもらいたいのは女(男)の趣味である。私は、彼がイザベル・アジャーニやナスターシャ・キンスキーをどんなに褒めたたえようが腹は立たないし、おおいに共感しつつ彼女たちの魅力について語り合いたいくらいなのだが、もしもペネロペ・クルスにぞっこんだったりしたら何かすごくイヤ。理屈じゃない。ジェラシーともちょっと違う。同じように、私が映画の中の佐藤浩市ではなく反町隆史にうっとり見惚れるタイプだったとしたら、彼は釈然としないにちがいない。
 笑いもまた、理屈じゃない。でも、何を笑うかには実はその人の世界との距離感が反映している。だから恋愛相手に限らず、同じタイミングで噴き出し、同じギャグに反応する誰かとは、世界を共有できる可能性があると思うのだ。逆に、なぜそれが可笑しいのだろう、どうしてそこで笑えるのだろうという違和感があると、ちょっとやそっとでは克服できない。笑いの趣味が同じかどうかは重要だ。世界を共有しながら、それぞれに好きなものがあってそれをお互い否定したり強制したりはしないこと。ただし、心穏やかに過ごすために女(男)の趣味は一致していること。見過ごせないポイントはその二つだけだ。 

                                                           川口晴美(詩人)

※ 営利、非営利、イントラネット等、目的や形態を問わず、本ウェブサイト内のコンテンツの無断転載を禁止します。  

ページ先頭へ戻る